ぼくのプレイしているファイナルファンタジー14
MMORPGとして現在では全世界で人気を誇るゲームになってます。
その一人のプレイヤーが綴ったブログがドラマ化、書籍化を経て映画化。
単身赴任中だったアキオ(坂口健太郎)の父・暁(吉田鋼太郎)が、突然会社を辞めて家に戻ってきた。アキオは、何を考えているのかわからない父のことを知りたいと思い、ある計画を思いつく。それは「ファイナルファンタジーXIV」に父を誘導し、自分は正体を偽り一緒に冒険に出るというものだった。こうして「光のお父さん計画」が始まる。
- シネマトゥデイ -
書籍・ドラマと大体知ってる内容なのですが
一プレイヤーとしても映画化は嬉しい。
ドラマ版も国境を超えて人気だったのでまた別の畑で育てばいいな
と思う次第でありました。
そもそもFF14ってなに?
ファイナルファンタジーシリーズで14作目にあたる作品でMMORPGというジャンルはFF11についで2作目*1シリーズ
とはいえ続編ではなくそれぞれ違う世界観な為どこから始めても大丈夫。MMORPGとはこの世界のどこかにいる様々なプレイヤーが同じ一つの世界を共有し、共に冒険したり、家を買って生活したりするゲーム。旧FF14として一度サービスを終了、新生して今年でサービス6年目になります。
光のお父さんって?
親孝行としてゲーム好きの父を自分の好きなファイナルファンタジー14に誘い、息子であることを隠してフレンドとなり光の戦士のお父さん=光のお父さんとする企画で始まったブログ記事のシリーズ。
当時高難易度コンテンツとして実装されていた大迷宮バハムート邂逅編の最終ボス、ツインタニアを倒すまでの育成計画であり、それを機に正体を明かすという流れ。
本作は実話を元に映画として再構成しており
現実の家族構成や職業など異なるところがあります。
ドラマ版もですがドラマティックに演出するために設定など脚色がされています。
原作であるブログはこちら
しかし大筋は共通として原作者であるマイディーさんは
オンラインゲーム上の人間関係は現実とは異なり
男女や年齢、職業、立場など関係ないフラットに接しあえる素晴らしさを説いています。そこには上司と部下、先輩後輩という上下関係も親子も関係ない、ただ同じ世界を共有するプレイヤーでしかない。
これはマイディーさんがブログや書籍、ドラマにおいても一貫している部分。
その想いを様々なインタビューや記事で伝えていますが
今回は最新であるマイディーさんと光のお父さん本人にインタビューした記事をぜひ読んで欲しい記事にはネタバレを伏せたバージョンもある為気負う必要はない。
最終的に光のお父さんの言葉には感涙物でした。
監督は野口照夫
エオルゼアパートを山本清史
岩本アキオを坂口健太郎
ゲーム好きの仕事に真面目な青年
疎遠となっていた父が仕事を辞めたことを訝しんで
FF14に誘ってゲーム内で聞き出そうと光のお父さん計画を開始する。
岩本暁を吉田鋼太郎
アキオの父。
専務昇進の話があったが突然仕事を辞めて単身赴任から帰ってくる
寡黙で何を考えているか分からない。
井出里美を佐久間由衣
アキオの職場の同僚
アキオに密かに想いをよせる
岩本美樹を山本舞香
アキオの妹
アキオと暁の間をとり持つツッコミ役
吉井晋太郎を佐藤隆太
アキオの職場の先輩
面倒見が良いが調子も良い
冒頭にて父が他界している。
岩本由紀子を財前里見
アキオの母
マイディーの声を南條愛乃
アキオのFF14内での分身
ミコッテと呼ばれる猫耳をある種族の女性キャラクター
ゲーム内のチームであるフリーカンパニーのじょびネッツァのリーダー
インディの声を吉田鋼太郎
暁のFF14内の分身
ヒューランと呼ばれる現実の人間に近い姿の種族の男性キャラクター
頑なな現実の暁とは逆にかなりフランク
フレンドになったマイディーが息子であることは知らない
あるちゃんの声を寿美菜子
じょびネッツァの副リーダー
ララフェルと呼ばれる小型の女性キャラクター
メンバーの中のしっかり者
きりんちゃんの声を悠木碧
じょびネッツァのメンバー
ララフェルの女性キャラクター。
不思議ちゃんだがたまに核心をつく。
映画として成立させた笑いあり涙ありの感動作
まず最終的に泣かせにくる作品であることは間違いないのだが
それを気負わせない要素として
脱力させるような笑いと
ゲームが分からなくても大丈夫な設計がなされている。
なぜならこれは現実とオンラインゲームを通じた
コミュニケーションにまつわる物語だからだ。
現実では父と子という立場から話しにくいこともあるだろう。
しかしオンラインゲームとは顔も歳も性別すらも分からない世界のどこかの誰かとゲームの世界で一緒に冒険したり他愛もない話をしたりする。そこには新たな社会があるかもしれないが、現実と切り離して本音で話せる場である。
息子は父に息子であることを隠して共に冒険し、
親子とは違う仲間という絆を築いていく。
そこには普段見ない父の姿が見えてきたり、
自分とは異なる事柄や感覚の違いを発見できたりする。
ゲーム用語もそもそも登場人物で詳しいのは
アキオと一緒にプレイしているこの世界のどこかの住人
他の父や母、娘は知らない人たちなので割合分からない人が多いのだ。
分からないなりにそういうもの、と解釈できる形になっている(と思う)
何より素晴らしいのは映画の為に構成を組み替えて
ラストに涙腺を決壊させる為の要素を埋め込んできている。
父子の回想エピソードを前々から挟み込んだのは非常にズルい。
とはいえ、この構成でもたかがゲームの域を越えない人には
終始なんでこいつらこんな本気になってるの?と思うかもしれないので
もしそういう方がいるならそれはご容赦願いたい。
とはいえ知られざる父の想いを知った時
それだけの説得力は感じられたと思う。
あとこれは絶対言っておきたいのが
プレイヤーとして最高だったのが冒頭の戦闘シーンである。
何が良いかって純粋にプレイヤーたちが好きなだけだ、
ここは完全にファンサービスだ。
本作のすごいところは紹介しよう。
注目したいポイントをあげて
大きく4つに分けてみました。
スクウェアエニックス公認作品
この映画はファイナルファンタジーを開発しているスクウェアエニックスが認めた作品。そもそもゲーム作品を題材とした一個人のブログの記事が映画化することが稀有でしたが、このドラマ・映画のプロデューサーがこれはドラマ化しなければと動いて同社と交渉し最終的にドラマ化から映画化までこぎつけました。それだけでなく、この実話を通じたテーマを伝えようと開発スタッフも素材の提供や監修を行っています。
二大主演の演技に注目
ドラマ版では博太郎という名で大杉漣が演じた光のお父さん
劇場版では暁として吉田鋼太郎が演じており、
どちらも強面ながらも劇中の可愛さが滲み出ていましたね。
個人的に直近で記憶にあるのがMOZUというドラマでガチのその筋のキャラクターを演じていたのが印象的で観る前からこれはイケると思ったがまさにその通りはまり役。
劇場版はより寡黙な父の印象が強いが、
喋らなくても感じられる存在感。
だからこそポロっと崩れる可愛さや、ゲームを楽しむ姿が微笑ましく思えます。
それでいて終盤につれてまだ何も起こってないのに揺さぶられます。
そしてアキオを演じる坂口健太郎もまた父との微妙な距離感は見事。
アキオはゲーム好きで仕事に真面目な青年だが、仕事に対して真摯に見えながらもどこか間の抜けている人物。それが親子だなぁと思えるところ。
ゲームプレイヤーが演技している
映画内容は実写パートとエオルゼアパートに分かれていて
エオルゼアパートは実際のプレイ画面を撮影・編集していること。
ムービーシーンを製作しているのではなく、
実際にリアルタイムでプレイしている映像を使っています。
ここは世代で印象が変わってくるかもしれないけど、
ゲームに触れる機会が少ない大人からすればCG映画と思うかもしれない。
そうではなく、実際にプレイヤーが操作したキャラクターとカメラに相当するキャラクターで映像を撮り編集。
さながらゲーム内で映画やドラマ撮影をしているイメージですね。
更にはモーションやしぐさを表現するエモート機能や
スクリーンショットの撮影加工を補助するグループポーズ機能など
ゲーム内の機能だけで撮影、
手を加えていても微々たるものだと思います。
ここで言いたいのは難しい機材などなくとも
プレイヤー一人がやろうと思えば出来る状態なんですね。
ちなみに今回は撮影用のワールドを用意して貰っての撮影ですが、
ドラマ版では実際のプレイヤーが遊んでいるワールドで撮影した為、
ロケーションやランダムで変化する天気など地道に待って撮影したという根気ぶり。
しかし今回ばかりはお金を払って劇場にきてもらうことから最大限出来得るものに仕上げようという意思の元に専用サーバーで撮影しています。
ここからはプレイヤー向けですが
かなりこだわって作られたのが分かります。
戦闘シーンも色々カット割って作っているんですけど、
コミカルなシーン、例えば一目散に逃げるところスプリント*2を使ってるんですけど立ち止まって息切れした瞬間スプリントが切れる描写とか。
何かとシャウトしたり大袈裟な所作ではエモートやアクションを駆使して描かれているので必見。
2度目見ることがあればそういうところにも目を配りたいですね。
使用される楽曲はほぼゲーム音源
劇中に使用されている音楽はほぼゲーム中に使用されたもので、
それらは実際に街やフィールド、ダンジョン、他にもストーリーの展開するイベント中に使用されています。それらの曲がシーンに則したイメージで再生されています。
ゲームを知らない人や他のFF作品のイメージを持つ人からすれば
ボーカル曲や冒頭のあの曲がまさにその戦闘曲とは思うまい。
本作の新たな舞台装置と原作から変わらないもの
まず舞台装置について
本作で登場するアキオの妹や、同僚は原作にはいません。
いわゆる物語を円滑に進める為の舞台装置。
特に妹の美樹は暁とアキオ、父子が互いに話せないことを
代わりに言ってくれる繋ぎ役。
更には物語上、リアルとゲームは世界が違えど通ずるものがある、
というテーマの一つを表すためのエピソードとしても活かされていました。
この妹が特にいい味を出している。
同僚の井出里美はアキオに密かに想いを寄せる存在として登場、
勘の良い人はあるシーンでこの為だけに存在したと気付くでしょうね。
とはいえ、彼女も繋ぎ役としてや
ゲーマーとそれを知らない人との会話の誤解あるある、
のような場面に活かされており無駄がないといった印象でした。
原作から変わらないものというのは
そもそもこの作品、大筋は大体同じなものの、
ドラマ版や劇場版として大きく異なる家族構成や職業などがあるんですね。
これは原作者マイディーさんが大切にしている、
オンラインゲームの素晴らしさを説く部分が反映されている。
それが叶うなら譲歩するということ。
それとは関係なく原作に忠実なことがあります。
アキオが操作するマイディーのフリーカンパニー*3じょびネッツァの主要メンバー。その副リーダーのあるちゃん、マスコットのきりんちゃんはブログでもお馴染みの人物。
きりんちゃんはマイペースで独特なキャラクター
それに加えて、マイディーの座っている膝に座るかのように座り込みにくるというエピソードがブログで語られていますがそれが劇中でも描かれています。
またFF14では同じみの
「よしだああああああ!」
という吉田シャウト。これは同ゲーム、
プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏に対する愛憎の表現。
現実の設定は色々変わっている反面、
ゲーム内において起こっているエピソードは概ね原作に忠実なんですね。
鑑賞して思ったのは改めて
ゲームをプレイしていない人に観て欲しい
と思う作品でした。
原作を更に脚色しているとはいえ、
原作はそもそも親孝行が動機なので大きく外れる主旨でもない。
こんなドラマを全員持っているかといえば、さすがにないが、
歳も性別も国籍も超えた出会いがあれば人生に影響を受けた人もいるだろう。
その一端を観て欲しい。
そしてゲームをプレイしている人もぜひ劇場で観て欲しい。
大きなスクリーンで見るゲーム画面もそうですが
FF14プレイヤーやネトゲ経験者あるあるな要素も多数散りばめられています。
暁やアキオを通じてゲームに関わる淡い思い出が引きずり出されこと必至。
同じように知らない人を芋ずる式に連れてきてくれ
満足度:★★★★★★★★☆☆(8/10)
10点つけてるだけの価値はあるけど
少し冷静になって抑えておきたい。
いやでももう一度観に行きたいんだよな、誰か連れて