少し冷えてきましたが暑い日も続く今日この頃。
季節の変わり目、風邪には気をつけてください。
劇場内で咳き込むと気になるので(ぉ
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1940年、連合軍の兵士40万人が、ドイツ軍によってドーバー海峡に面したフランス北端の港町ダンケルクに追い詰められる。ドイツ軍の猛攻にさらされる中、トミー(フィオン・ホワイトヘッド)ら若い兵士たちは生き延びようとさまざまな策を講じる。一方のイギリスでは民間船も動員した救出作戦が始動し、民間船の船長ミスター・ドーソン(マーク・ライランス)は息子らと一緒にダンケルクへ向かうことを決意。さらにイギリス空軍パイロットのファリア(トム・ハーディ)が、数的に不利ながらも出撃する。
- シネマトゥデイ -
クリストファー・ノーランなら観るしかない!
その使命感しかないんだな。
撮影にCGを使用しない、というノーラン監督。
ダークナイトトリロジーではオブジェクトの爆発表現、
インセプションでは夢の中で重力の変化、
インターステラーでは時空の概念、
全て実物、大人数のエキストラを用いた撮影。
そんなノーランが戦時中の実写に挑むとなれば
戦艦は?戦闘機は?どんなコストになるのかと思ってしまう。
なおノーラン監督は昨今のDC映画の製作総指揮にも関わっています。
基本的に彼が脚本を書いた作品は評価が高いです。
では主な登場人物を紹介します。
イギリス陸軍二等兵トミーにフィン・ホワイトヘッド。
ダンケルク海岸に追い込まれたイギリス兵の1人。
映画は初主演、TVドラマHIMでデビューし、その最中オーディションで本作の主演の一人として抜擢される。
小型船の船長ミスタードーソンにマーク・ライランス。
イギリス・フランス連合軍を救出にいく民間船の一つとして自らダンケルクに向かった船長。
ブリッジ・オブ・スパイではルドルフ・アベル、BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアントではBFGを演じた。
イギリス空軍ファリアにトム・ハーディ。
ダイナモ作戦において撤退を支援する為に向かったスピットファイアのパイロットの1人。
ノーラン作品でいうとダークナイト・ライジングでベインやインセプションでイームスを演じる他、昨今ではマッド・マックス 怒りのデスロード、レジェンド狂気の美学で主演し、レヴェナント:蘇えりし者ではレオナルド・ディカプリオ演じるグラスの復讐相手フィッツジェラルドを演じた。
他役名のある登場人物が多くいますが割愛します。
ダンケルクの戦いとは
本作は第二次大戦中にドイツ軍のフランス侵攻により港町ダンケルクに追い込まれたイギリス・フランス連合軍がドイツ軍と攻防しつつ小型艇、駆逐艦、民間船を用いて撤退した戦いを描いています。
戦いといってもほぼ撤退戦。
これをイギリスの作戦コードでダイナモ作戦と呼ぶ。
またイギリス・フランス両軍とも救出されたが、フランス軍の大部分は投降したと言われています。
実際ぼくはあまり馴染みのないところですが、
イギリスでは今でも語られる話のようですね。
ではただの戦争映画ではない、撤退戦描く本作はどうなのか。
感想に移ります。
3つの視点のザッピングによるサスペンス撤退劇
本作は陸海空それぞれの視点で描かれています。
というのは前情報で得ていたわけですが。
劇中でそれぞれ表記されるんですね。
- 堤防:一週間
- 海:1日
- 空:1時間
なんの表記だろうと思っていたのですが
これ、ダイナモ作戦終了までの時間なんですね。
英語表記ではそれでそういう意味に捉えられるのかな。
それを繰り返し場面を切り替えています。
なのでリアルタイム平行ではないのがミソですね。
終わりにつれてどんどん時間のズレが収束されていきます。
次第に空から見る海や堤防という感じで
別の場面の人物が登場したりと少し謎を読む要素があります。
またセリフらしいセリフはほぼなく、説明もされないので
なぜ彼はあんな行動をとったのか、それは観る側が想像するしかない。
単純にサスペンスとして撤退劇を見守るのが普通の楽しみ方だと思いますが、楽しみ方はそれぞれだと思います。
実際戦争映画ではなくサスペンスの要素が強いのは
基本銃器を手に戦い合うシーンがほぼないからです。
一番その要素があるのは空での戦いだと思いますが、
他は相手のドイツ軍が映ることはない。
常にイギリス・フランス連合軍が何かに攻撃されている事実だけ。
見えない敵に襲われる恐怖はこちらからも感じられました。
それを煽るのがハンス・ジマーの音楽。
一種のトランス状態にでもなるかのようなメロディらしいものがない曲は劇中に同化しホント煽られた。そして胃が痛くなる。
キャラクター性も物語も省いた異色作
ここで面白いのかを問われると好みを分ける。
という結論に達しました。
ノーラン作品として観に来た人は彼の映像表現もさることながら脚本に注目する人も多くいると考えています。脚本でいうと構成に関してはザッピングされたストーリーには評価されると思いますが、物語として評価されるかといえば二分する。
それは先も言ったように見えない敵から逃げる撤退劇であり、戦争は事象とでしか認識できない。登場人物もキャラクター性をとことん削いでおり、背景となる設定を読み取るのが難しいほどセリフが少ない。それが各登場人物の行動の動機を読み取るには最適ともいえるでしょう。
しかしその分今までのエンターテイメント要素はない。
インターステラーでさえ3時間近くに及ぶ作品でガチのSF要素満載だったが、家族をテーマにした作品だったので受け入れられた面があります。
本作で登場する陸のトミー、海のドーソン船長、空のファリア。
トミーはまさにドイツ軍にダンケルク海岸へ追いつめられたイギリス兵士。限りある船に乗り込んで脱出する為にあらゆる方法を試みる。彼自身の背景は特に語られる事なく、故郷に帰る全ての兵士が思う目的を持つ代表的な立場。
ドーソン船長は民間人ですが、自らダンケルクに兵士を救いに行くことを目的にしている。連れに息子とその友人を連れていき、彼自身若者に戦争を押し付けたという想いからの行動が語られます。しかしやはり設定は薄い。
ファリアは当時最新鋭機のスピットファイアに搭乗する空軍パイロット。
唯一敵対する相手と戦う立場で燃料の残量が尽きかけても戦い続ける様はカッコいいが、全身パイロットスーツで顔も読めずやはり薄い印象でした。
そんな本作だがこみ上げてくるところがないわけではない。
終盤の船の転覆する中逃げ惑う兵士の頭上で繰り広げられるスピットファイアの戦闘や、ダンケルク海岸で見守る少将が水平線の向こうに見つけてもらしたセリフにぐっと来た人も少なくない。
また、戦争をする国は少なからず兵士達は思うところがあるようで
イギリス兵士も何も戦果をあげることなく撤退したことに屈辱的だと語るシーンがあるのですが、それに対するイギリス国民の反応にこみ上げてきました。
これは体験型映画である
この作品は3つの視点による撤退戦。
観ている者の視点ではなく、登場人物の少し背後、上の方から観ているような作品と感じました。つまりは自分たちが登場人物ではないが、それをトレースするかのように身近に体験できる作品。
4DXで鑑賞しましたがが、今回はまさに自分がその場にいるかのような感覚になることが何度かありました。銃撃と同時に背後からエアーが吹くと驚いたし、スクリーンの彼らの動向を気にしていると専用のシートに座っていることを忘れていた。
三人称視点でみているが、VRゴーグルをつけない、
体験型作品となっていると思います。
なんていうかTPSゲームをプレイしている感覚ですかね?
でもこれは暗い劇場でスクリーンに集中して観るべき作品だと思います。なんていうか家庭のテレビで明かりがついた状態、更にはながら見に近い状態が重なるとあっという間に退屈なものになりそう...そんな気がする。
そうなるといかに作品にのめり込むかが重要な作品。
サスペンスの息が切れるとたちまち眠気が襲う。
そういう意味でも人を選ぶ作品。
満足度:★★★★★★★☆☆☆(7/10)
通な映画好きにはこれほど素晴らしいものはないと思う。